光の中を通り過ぎる列車を見ると、
なぜ、心が温かくなるのだろう…
ようこそ、ロマンティックな「ヨルテツ」の世界へ。
 「あ、電車だ!」。長らく夜景の仕事をしていると、良く出合うシーンだ。まるで流れ星のような、夜景に特別な変化を与える夜の電車。気づけば、心の中で次の電車を待ちわびながら、夜景を眺めていたりする。不思議なのは、電車を眺めている瞬間、現在・過去・未来の全てに思いを馳せているのではなく、なぜか過去を見つめてしまうことだ。心を揺さぶる“懐かしさ”と言い換えることもできるが、じんわりと心が温かくなってくる。トコトコ…と、アナログ的な響きが伝わるほど、意識が過去の記憶を辿っていく。
 大人になり、夜景評論家としての活動も今年で20周年。偶然ながら、著書の数も本書で40冊という節目を迎えた。サラリーマンを辞めて独立した10年前からは全国各地を行脚。各地の夜景を発掘し、PRする仕事に変化していたが、転機は、新聞連載の「東海道夜景五十三次」。それまで目映い光ばかりを追い続けていたはずが、次第に宿場の闇に迫る旅路となった。夜景とは「夜のけはい」であり、光量の多さ、少なさは関係ない。逆に闇と向かい合うほどに、夜景の奥深さ、闇がもたらす想像力に魅了されてしまったのだ。そう、前述したような、過去へ意識を連れ戻すような夜景の力。そうした力のおかげで、遠い過去の記憶となっていた電車好きも蘇ってきた。夜景と電車。その競演をぜひ実現したい。その思いの結晶が「夜光列車」となった。 薄暗い町を走る一本の光。過ぎ去る車窓の光。静寂に満ちた駅舎…。決して光量の多い夜景ではないが、なぜか心に染みる情感に満ち溢れている。優しく、はかなげで、愛らしい「夜光列車」の世界。語呂の良さで列車としているものの、あえて電車として眺めて欲しい写真である。
夜景評論家 丸々もとお
写真集『夜光列車』
(著)丸々もとお・丸田あつし
出版社:光村推古書院
好評発売中
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